50代男性の店長代理が長時間労働により急性大動脈解離を発症して死亡した事案

【太陽家具百貨店事件・広島地判平30.3.30-57歳男性の店長代理が長時間労働により急性大動脈解離を発症して死亡した事案】

 本件は、管理職が、死亡前1~2か月目が80時間超、死亡前3~4か月が平均80時間前後の時間外労働に従事したことにより、マットレスを配達しに行った顧客宅で作業中に突然倒れたという事案です。

 住宅の営業職として稼働していた男性(亡A)は、50代半ばで家具販売会社に中途採用され、自宅のある呉市の小規模な不採算店舗(呉店)に配属されたのですが、店長がくも膜下出血により休業して降職されたことから、採用から1年余りで店長代理に就任しました。本件は、この店長代理の職にとどめておいたことが安全配慮義務違反となるかどうかが争われました。

 亡Aが配属された呉店は営業店舗の中で売上高が最も少なく、売上目標が達成できない状況にあったので、これを達成すべく、亡Aは、顧客へのダイレクトメールを独自に作成するなどの営業努力をしていましたが、本社からは支援がなく、売上に繋がらないので、部下の目から見ても相当悩んでいました。一方、亡Aは、月次報告書など文書全般の作成効率が悪いので、早くに出勤して文書を作成していましたが、タイムカード上の出勤時刻が早くなっても、本社総務部は、呉店は売上げが少ない=仕事量が少ない=業務負担は軽いと考え、亡Aを管理監督者扱いしていたこともあり、出勤時刻の記録を問題視せず、「こんなに早く来なくてもできるでしょう」と述べるにとどまり、具体的な改善指導や支援策を講ぜず、店長代理の適性につき問題視することもありませんでした。

 広島地裁判決は、長時間を費やして顧客への宣伝活動に取り組んでも、「本社からも部下からも十分な理解が得られず、結果として売上にも結び付かない状態にあったのであり、経験の極めて乏しい亡Aをしてこのような呉店の店長代理の職に置き続けたことこそが、その過重な負担となっていた」とし、会社としては、タイムカード上の出勤時刻が早くなっているとの「端緒を得た以上は、亡Aや他の呉店従業員に対しより具体的な聴き取りを実施して、休日出勤を含むより実態に即した労働時間の状況を把握することも、亡Aが独自に行っている顧客への宣伝活動、亡Aの事務遂行上の非効率について把握することも十分可能であり、また、そうして得た情報を基に、業務の効率化や必要な支援に取り組むことはもちろんのこと、場合によっては店長代理の職を解くことを含めて検討し、その労働時間や勤務負荷を適切に管理すべきであった」と判断して、安全配慮義務違反を認めました。

 安全配慮義務の内容として降職に言及する裁判例は珍しく、注目されます。

 

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