長時間労働を是正するための職場環境改善の方法

 長時間労働を防止して労働者が健康に働くためには、企業独自の風土や文化を見直していかなければなりませんが、これは企業組織レベルの中期的な課題として位置づけるべきです。

 一方、職場集団レベルまたは労働者個人レベルの短期的な課題を解決していかなければなりません。

 そのため、企業の経営者が労働時間を適正に把握し、長時間労働を是正してメンタルヘルスケアを実施する旨の方針を表明することが必要です。経営トップが方針表明することで、自主的な安全衛生活動に時間、予算、人材を使う正当性が生まれ、普及していくことになるからです。そうであれば、企業だけではなく、労働組合でも執行部が方針を表明した方が組合員も活動しやすくなるでしょう。

 トップダウンで方針を表明したとしても、職場や労働者の意見を反映しなければ実効性は期待できません。職場環境の改善においては、業務の内容や分担の適正化などについて、職場全体での話合いや労働者参加型のワークショップによる方法が有効とされています。

 労働者参加型の職場環境改善が有効な理由は次の3点です。

 第1に、労働者は現場の強み、課題と解決策をよく認識しているので、職場環境改善の前提である適切なアセスメントが可能となります。

 第2に、労働者自身の参画により、有意な変化を経験し、組織としての学習と水平展開が行われ、また、実際の関与とそれに引き続く成功体験が得られる結果、労働者のコントロール感覚、技能・スキル、自己効力感などが高められます。

 第3に、職場環境改善のプロセスによってもたらされる労働者の参加と対話の機会は、職場における民主的な風土や公平感の醸成、コミュニケーションの活性化、同僚間のサポートなどを強化して、メンタルヘルス不調の予防に役立ちます。

 要は、職場ごとの問題点を知っているのは労働者であり、その解決策を出せるのも労働者なのです。そこで、労働組合としては、職場集団レベルで改善できることを組合員が中心となって議論することを提起するとよいでしょう。

 長時間労働の是正方法を検討するに当たっては、ワークショップにおいて、産業医、保健師や衛生管理者(衛生推進者)などの産業保健スタッフ、または弁護士を助言者とし、優先して解決すべき長時間労働の要因を抽出し、すぐに対策を実施すべき事項、段階的に対策を実施していく事項、当面は研修などで対応する事項に分けて、課題の緊急性・重要性に応じて具体的な改善策を実施します。実施可能な対策からまず実行し効果を把握しつつ、対策の改善を図ることで、いわゆるPDCAサイクルを回していきます。条件のある職場では、計画策定段階から労働組合が支援し、職場環境改善を実施した上で報告してもらうとの取組みをしてもよいでしょう。

 改善策は、難しく考える必要はなく、コミュニケーションが取りやすいよう職場のレイアウトを変更したり、「立ち会議」を実施したりするなどの身近なものでよいです。大人数で会議をするのは必ずしも効率的ではないので、少人数のミーティングの場を設け、適時に打ち合わせができるようなテーブルや椅子を配置することも考えられます。

 問題点の抽出と解決は必要ですが、それだけでは足りません。職場の悪い点ばかり挙げると改善に向けたモチベーションが下がるので、より積極的に、職場の良い点を挙げ、どのような職場にしていきたいのかという視点も加えて多角的に検討するとよいでしょう。そうすると、職場の人間関係が良好となり、労働者個人レベルのストレス対処にもつながります。

 職場の意見を聴きながら職場環境の改善をするに当たっては、衛生委員会を活用することも考えられます。労働組合としては、組合員を衛生管理者(衛生推進者)の資格を取得させたり、労働者側委員を推薦したりしましょう。仮に衛生委員会を設置する義務がある事業場でなくても、職場や労働者の意見を聴く機会を設け、その意見を反映させた上で職場環境の改善を検討し、職場でのストレす要因を除去したり、低減したりすることが必要です。

 過労死やメンタルヘルス不調を防止するには、「疲れたら休む」ことから始めるのが肝要です。労働組合が主導して、年次有給休暇を取得しやすい環境づくりをすることも検討しましょう。

 そして、労働組合としては、職場アンケートを実施するなどして、ある職場の良好事例があればこれを他の職場へ水平展開すること、成果を資料や要求にまとめて事業者に改善を求め、経営トップの方針につなげていくことが役割であるといえます。

 職場環境改善には、トップダウンと、職場からのボトムアップの両者を関連づけることが必要であり、いずれか一方だけでは、真の「働き方改革」にはつながらないといえます。

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