残業

1 労働時間制度の原則と例外

(1) 原則

photo390001 労働基準法は、休憩時間を除く実労働時間の制限を定めており、1日8時間、1週40時間としています。法定労働時間とは、この規制された1週間および1日の最長時間をいいます。これに対し、所定労働時間とは、就業規則や労働協約の定めにより、労働者が労働義務を負い、使用者がその労働義務の履行に対して賃金支払を約した時間をいいます。

 また、休憩時間は、①労働時間の途中に、②事業場の全労働者に一斉に与え、③労働者に自由に利用させることが原則です。休憩時間は、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいいます。一般に、実労働時間と休憩時間を合わせた時間を拘束時間といいます。

 休日は、毎週少なくとも1回の休日または4週間を通じて4日以上の休日が与えられなければなりません。これを法定休日といい、この法定休日における労働を休日労働といいます。他方、所定休日は、就業規則や労働協約の定めによる休日をいい、通常は法定休日を含みます。

 この労働時間制度の原則に違反した場合、民事上では、この基準に達しない労働契約、就業規則、労働協約は無効とされます。したがって、所定労働時間が法定労働時間を超えても、それは無効であり、法定労働時間の範囲内とされます。また、刑事上では、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

(2) 例外

 しかし、労働基準法には、労働時間制度の原則に対する例外が様々規定されています。

 まず時間外労働・休日労働として、災害等による臨時の必要がある場合で労働基準監督署長の事前または事後の許可がある場合、いわゆる三六協定が締結されて労働基準監督署長に届け出されている場合があります。

 残業とは別に、変形労働時間制があります。この制度には、1か月単位、1年単位、1週間単位、フレックスタイム制の4種類があります。また、みなし労働時間制という制度もあり、これには、事業場外労働、専門業務型裁量労働、企画業務型裁量労働があります。

 これらの例外は、労働時間制度の原則の網はかかっており、これを柔軟にするというものです。これに対し、原則が適用除外となる者が労働基準法において定められています。①農業、畜産、水産業の事業に従事する者、②監督または管理の地位にある者(管理監督者)もしくは機密の事務を取り扱う者、③監視または断続的労働に従事する者で、使用者が労働基準監督署長の許可を受けた者です。このうち一番問題となるのが管理監督者です。

 

2 管理監督者

(1) 定義

 管理監督者であるか否かは、「一般には局長、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であるが、名称に捉われず、出社退社等について厳格な制限を受けない者について実態に即して判断すべきものである」というのが行政解釈です。

(2) 判断要素

ア 職務内容、責任と権限

 管理監督者として認められるためには、職務内容や職責が経営者と一体的な立場にあると認められなければなりません。

 しかし、次の事情だけでは、経営者と一体的な立場にあるといえるほどの権限や責任を有しているとはいえません。

  1. 部下からの勤怠の届出に承認を与える。
  2. 人事考課に際して意見を述べる。
  3. 部下の考課について上位者の考課が予定されている。

 

イ 勤務態様

 管理監督者として認められるためには、労働時間について裁量を有している必要があります。

 しかし、タイムカードの打刻が免除されているだけでは、出退勤について裁量があるとはいえません。

ウ 賃金等の待遇

 管理監督者として認められるためには、経営者と一体的な立場にあるといえるほどの待遇を受けていなければなりません。

 しかし、役職手当は付くが、残業代が出ないと、給料の金額は下がってしまうというのでは、一般労働者に比べて権限や責任の相応した高い待遇を受けているとはいえません。

(3) 管理監督者には当たらないとされた例

  1. 一般従業員と同じ賃金体系・時間管理下にある名ばかりの「取締役工場長」
  2. 昇進前とほとんど変わらない職務内容・給料・労働時間の「課長」
  3. 出退勤の自由がなく、部課の人事考課や機密事項に関与していない「銀行の支店長代理」
  4. 材料の仕入れ・売上金の管理等を任されているが、出退勤の自由はなく、仕事もウェイター、レジ係等全般に及んでいる「レストラン店長」

 

(4) 管理監督者に当たるとされた例

 労働時間の自由裁量、採用人事の計画・決定権限が与えられ、役職手当を支給されている「人事課長」

(5) 適用除外の範囲

 労働時間、休憩および休日に関する規定が適用除外となりますが、深夜労働の規制や年次有給休暇は除外されません。適用除外の結果、残業代は発生しないことになります。

 

3 残業の割増賃金

(1) 割増率

  1. 時間外労働(休日・深夜労働ではない) 25~50%以上
  2. 休日労働(深夜労働ではない) 35%以上
  3. 時間外労働で深夜労働の場合 50~75%以上
  4. 休日労働で深夜労働の場合 60%以上
  5. 休日労働が8時間を超えた場合 35%以上
  6. 法内残業(8時間まで) 0% ただし、就業規則等に定めがあれば別です。

 

(2) 割増率の引き上げ

 残業が月60時間を超えた場合には残業代の割増率が25%から50%に引き上げられています。これは法定の義務です。

 また、引上げ分(25%分)の残業代の支払に代えて、有給の休暇を付与することができます。この代償休暇については、従来、職場のなかでは違法に実施されていたところもあり、労使協定を締結する際には注意が必要です。なお、労働者が実際に有給の休暇を取得しなかった場合には、50%の残業代の支払が必要です。

 これに対し、1か月に45時間を超えて残業を行う場合には、あらかじめ労使で特別条項付きの三六協定を締結する必要があります。この協定において月45時間を超える残業に対する割増賃金率を25%を超える率で定めるよう努めること、月45時間を超える残業をできる限り短くするように努めることが使用者に課されています。

(3) 割増賃金の算定基礎から除外される賃金

 ①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた手当、⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

 

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