会社の英語公用化に社員は従うべきか

 企業内での英語公用化は、英語が苦手な社員にとって、コミュニケーションが困難になる上、仕事のほかに英語の勉強が必要となってきます。会社が英語公用化やTOEIC受験義務化をすることを、社員は拒否できないのでしょうか。

 入社した時点で日本語を使用して労務提供していたのでしたら、それが労働契約の内容になります。事務や経理など特に英語を使わない部署があり、そこで与えられた業務を遂行しているのであれば、労働契約上求められる労務提供ができていることになります。

 ただし、海外や国内でも英語を使って勤務することが条件で入社した場合は別です。

 会社が突然、就業規則で英語使用を義務化し、TOEICの成績によっては降職や減給をするとの規定を設けたとしたら、就業規則の不利益変更となり、労働契約法10条に定める必要性や合理性などの事情を満たさなければ、その変更が無効となり、社員は英語使用の義務を免れることになります。
 就業規則が変更されなくても、英語ができないという理由だけで査定により降職や減給をすることは、業務上の必要性がなく、大きな不利益を労働者に課すことになるので、権利の濫用として無効となる場合があります。英語を話す部署でもないのに英語が苦手で降格させられたという場合はなおさらです。

 しかし、裁判を起こしたとしても、就業規則の拘束力や降職等の効力は無効との判決が確定しなければならないので、それまでは、社員が拒否すると業務命令違反で懲戒されることがあります。仮に懲戒解雇された場合、裁判に勝てば会社から解雇期間中の賃金が支払われることになりますが、裁判中は無収入となります。

 社員に高いレベルの英語力を求めるのであれば、教育訓練として一定の学習期間を設け、会社が費用負担し、語学教室に通う時間も残業として認めるべきです。英語公用語化による社員の負担増は会社が負うべきでしょう。

 以上のことを踏まえ、導入時に労使でよく話し合うことが必要です。

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