会社が就業規則に定められている夏季休暇を廃止する代わりに年次有給休暇を消化するよう指示してきた場合、これに従わなければならないのでしょうか。
労働契約法は、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の事情に照らして不合理なものであるときは、その効力を有しないと定めています。
就業規則に夏季休暇が定められており、これが有給であったとしたら、労働基準法に規定する年休とは別の有給休暇になり、労働条件の一部となります。
この夏季休暇を特別な有給休暇とすることを廃止し、法定の年次有給休暇を取得するように変更することは、労働者に不利益があるといえます。
年休の消化率を向上させる必要はありますが、特別有給休暇を廃止して年休を取得させることは、就業規則の変更の必要性があるとは認められません。
法定の年次有給休暇とは別に、特別有給休暇として夏季休暇を就業規則で定める企業は少なくなく、特別有給休暇を廃止して夏季に年休を消化させることは社会的に相当であるとまでいうことはできません。
このように必要性がなく、相当でもない就業規則の変更により、本来労働者が指定した時季に年休を取得することができるという自由が奪われるとしたら、労働者の不利益の程度は小さくないといえます。
しかも、使用者が一方的に就業規則を変更し、その必要性を十分に説明せず、不利益を緩和する措置も講じないのであれば、変更は無効となる可能性があります。
就業規則の変更が無効になると、従前の特別有給休暇である夏季休暇を取得することができます。
ただ、無効かどうかは裁判所が判断することなので、判決が確定しないと労働者が特別有給休暇である夏季休暇を取得することはできません。
年次有給休暇の計画的付与制度を利用し、夏季休暇を設定している企業もありますので、特別な有給休暇を縮小しつつ、計画的に年休を取得するようにして、夏季にまとまった休暇をするよう労使で協議することが考えられます。