早朝に自宅を出て電車に乗り、地方の支店で会議に出席し、現地の取引先も回り、深夜に帰宅するという出張をしても、わずかな出張手当が出るだけで、残業手当が支払われないということがあります。
出張先との往復にかかった時間も労働時間に含めるべきではないかということが問題になりますが、自宅と出先との間を直接往復する「直行直帰」は、労働時間ではないと扱われるのが一般的です。移動中は使用者の指揮命令下にないことが理由です。
荷物の運搬などで移動そのものが業務である場合や移動中に書類を作成するよう命じられた場合などは、労働時間と認められることもあります。
出張先での勤務について、労働時間を算定できる場合なら、実労働時間で計算します。ただし、外回りなどで労働時間の把握が難しい場合もあるので、一定の時間働いたとみなす「事業場外労働のみなし労働時間制」という例外が設けられています。みなし時間制を採用すると、実際に働いた時間の長短にかかわらず、所定労働時間働いたとみなします。
出張であっても、携帯電話で上司の指示を逐一受けながら動いている場合など、労働時間を算定できる場合には、「みなし時間制」は採用できません。
出張先での業務が、所定労働時間内では終わらないことが明らかである場合は、所定労働時間ではなく、通常必要とされる時間働いたとみなします。例えば、所定労働時間が8時間の会社において、ある出張先での業務は「10時間をみなし時間とする」と会社が決めるか、または労使協定を結べば、10時間働いたとみなされ、8時間を超える分については残業手当が支払われます。
出張先での会議や取引先回りだけで、所定労働時間を超えるというのであれば、わずかな出張手当に甘んじることなく、通常必要とされる労働時間を特定し、会社に残業手当を請求した方がよいでしょう。