飼っている犬が散歩中に顔を近づけてきた女性の唇にかみ付き、ケガをさせました。数針縫う治療をしたようですが、女性が「美容整形をする」と大金を要求してきました。損害賠償する必要はあるのでしょうか。
飼っている動物が他人に損害を与えた場合、飼い主には原則として損害を賠償する責任があります。ただし、動物の種類や性質に従い相当の注意をしていたときは責任を負いません。
「相当の注意」とは、ペットの犬であれば人に咬みついてケガをさせることは珍しいことではないので、事故を起こさないよう万全の手段をとることをいいます。裁判例では、動物の散歩中の場合、飼い主が免責されることは少ないです。
ただ、損害の発生、拡大について被害者にも過失があった場合に損害賠償額が減額されます(過失相殺といいます)。裁判例では、ペットの犬に親愛の情を示す程度の行為は往々に見られるとして過失相殺を否定した例もあれば、逆に過失相殺を認めた例もあります。
被害者が自ら犬に顔を近づけたことで起きた事故だとすると、顔の近づけ方などによっては、咬まれた人にも落ち度があるといえます。その場合、過失相殺により損害賠償額が減額されます。
損害としては、治療費、ケガで仕事を休んだ期間の賃金分(休業損害といいます)のほか、慰謝料を被害者に支払わなければなりません。
一定の大きさで、人目につく傷跡であれば美容整形の治療費も損害賠償の対象になるでしょう。逆に傷跡が目立たないのであれば、整形の必要性は否定され、その治療費は損害として認められないこともあります。
治療費や慰謝料などの損害はどの程度かを検討したうえで、弁護士が代理人となって訴訟や調停をすることができますので、まずはご相談ください。