夫が脳出血で倒れ、幸い命はとりとめましたが、当分は働けないのに、会社は「労働災害ではない」との対応をとっています。どうしたらよいでしょうか。
労働者が業務上の過労やストレスが原因で病気になったときは、労災保険から給付が受けられます。仕事に起因することが明らかであれば、脳や心臓の疾患だけでなく、うつ病などの精神障害も対象になります。
労災認定が出れば、労災保険指定病院などで費用負担なく治療が受けられます。健康保険の傷病手当金は1年6か月で支給が終わりますが、労災だと治癒か症状固定するまで休業補償給付が受けられます。休業補償給付が支給されて療養している間は、会社はその労働者を解雇できません。
仕事が原因とする基準については、▽脳・心臓疾患を発症した当日直前から前日までの間に、仕事上の事故・事件などの異常な出来事に遭遇した、▽発症前の1週間に特に過重な業務をしていた、▽発症前の6か月間、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務をしていた、のいずれかの要件を満たすという基準を厚生労働省が立てています。
過重な業務に当たるかどうかは、労働時間、勤務時間の不規則性、事業場外における移動を伴う業務、心理的負荷を伴う業務、身体的負荷を伴う業務、作業環境という要因から判断します。
労働時間は特に重要な要因となります。発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働があるとき、あるいは発症前2~6か月間に月80時間を超える残業があるときは、仕事との関連性が高いとしています。ただし、過労死ラインに至らないけれども、これに近い時間外労働が認められるという場合には、労働時間以外の負荷要因も考慮し、業務と発症との関連性が強いと判断するとの2段階評価を設けています。
残業で深夜の帰宅は日常的で、出張も頻繁にあり、休日にもよく呼び出されて出勤していたのであれば、労災認定される可能性が高いです。労災を認定するのは労働基準監督署長です。会社が請求手続きを代行することもありますが、本来の請求権者は本人ですので、過労が原因だということであれば、労災請求をしてください。
会社が「仕事量が多かったわけではないから労災ではない」と取り合ってくれず、請求書に会社の証明印が押してくれないという場合でも、その旨の上申書をつければ請求できます。
出勤簿、タイムカードなどの資料を会社から取り寄せた方がよいですが、一人で不安でしたら、弁護士に相談してください。