婚礼装花販売店店長(女・40代)が長時間労働により脳出血を発症して後遺障害を負った事案の損害賠償

事案と受任前

 本件は、婚礼装花等を制作・販売する店舗の店長(40代女性)が、ブーケなどの婚礼装花やイベント装花の製作および搬入出作業、フラワーアレンジメントや花束の制作、生花の管理だけでなく、顧客との打ち合わせ、受注内容に基づく生花の種類・本数の集計、婚礼会場等への搬入スケジュールの作成、店員の勤務シフトの作成などの業務に従事し、休日を十分に取得できず、特に繁忙期は月100時間超の残業をし、閑散期でも恒常的に残業をしていたことから疲労を蓄積させ、2012年12月18日、午後10時頃に仕事を終えて帰宅中に脳出血を発症した事案です。

 約3年分のタイムカードのコピーがあり、長時間労働の立証はできたので、被災者自身が労災認定を得ていました。

 被災者の後遺障害は比較的軽かったのですが、それでも花屋での勤務は困難となりました。そこで、株式会社とはいえ、フラワーデザイナーの個人企業のようなものでしたから、会社だけでなく、社長にも責任を追及したいと相談をしてきました。

弁護活動と結果

 社長の個人責任を追及することと、3年の消滅時効が迫っていたことから、示談交渉を経ずに、東京地裁に損害賠償請求訴訟を提起することにしました。

 タイムカードにより始業時刻と終業時刻の立証はできるものの、その間にどのような仕事をしていたのかを具体的に主張し、かつ立証しなければならないので、本人から送られてくる資料や大量のメモ書きを整理・分析しました。また、被災者は健康診断で高血圧が記録されていたので、長時間労働や睡眠不足が高血圧を発症・増悪させることを医学文献を収集した上で主張しました。

 争点整理の途中の段階でしたが、会社代理人の方から和解が打診され、これを契機に裁判所からも和解勧告がありました。

 高血圧を理由とした一定の素因減額は避けられなかったものの、会社と社長が連帯して損害賠償金を支払う勝訴的な和解を勝ち取りました。

 判決に至った場合は、高血圧の素因減額の割合が高く、後遺障害が軽度ゆえに労働能力喪失率が低く認定される可能性がありましたが、尋問前の早い段階で高い水準の損害賠償金を支払わせることができました。

解決のポイント

 死亡や高度障害の事案では本人から事情聴取できないゆえに事案の解明に苦労するのですが、本人が資料の準備できる事案では、本人の思いが入ったメモを解読するので、事案の整理に手間がかかります。これが弁護士の仕事なのですが、事案の分析のため具体的な質問を心がけて本人の供述を引き出しつつ、本人の思いも反映した主張にまとめ上げ、毎回提出する主張と証拠の枚数は3桁に上りました。主張と証拠の量で会社側を圧倒したことが勝訴的和解に結びつきました。

 会社側から和解金が振り込まれた後、ご本人より、

  • 勝訴和解という納得できる方法で裁判が終了したことや、ご本人が理解するまで説明・助言をしたことに感謝すること、
  • 労働問題に詳しい弁護士に相談できてよかったこと、

などが書かれた手紙をいただきました。当職としては、ご本人が相談に来られた当初より表情が明るくなったので、嬉しい限りです。

過労死(損害賠償)に関するその他解決実績

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