営業事務社員(男・30代)が長時間労働の継続により致死性不整脈を発症して死亡した事案の損害賠償

事案と受任前

 本件は、営業事務社員(30代男性)が、営業社員がアパレルメーカーから受注してきたバッグ・アクセサリーなどのサンプルや本製品の製造を管理する業務に従事し、深夜に及ぶ長時間労働や休日出勤が継続したことにより疲労を蓄積させていたところ、2015年11月28日未明に帰宅し、同日の朝起床した後にシャワーを浴びている最中に浴室で倒れ、死亡した事案です。

 労災認定されたことから、引き続き損害賠償請求についても後輩弁護士とともに代理人に就任しました。

 >>解決のポイント(労災認定)

 会社に対して示談折衝を求めましたが、会社がこれを拒否したことから、会社と代表者を被告として損害賠償請求訴訟を提起しました。

弁護活動と結果

 文書ファイル等の更新時刻や電子メールの送信時刻が夜に記録されていることについて、会社は、被災者が中抜けしていた、退勤後に社外からメール送信等をしていた、夜間に作業する必要性がなかったことから、労働時間とは認められないと主張しました。これに対し、会社が退勤したと主張する日について各ログを順番に並べ、メールの件名や本文、添付ファイルの有無、更新した文書ファイル名を分析し、業務内容、業務の必要性があったこと、社外からスマートフォンによりファイル添付のメールを送信することは困難であることなどから、過労死ラインを超える残業をしていたことを丁寧に主張しました。一審段階では訴状を含め12通の主張書面を提出し、ログから業務内容や労働時間を分析した表なども添付しました。

 また、同僚から事情聴取をして陳述書を提出し、法廷でも証言をしてもらいました。一方、上司の反対尋問では、被災者に有利な証言を引き出すとともに、不自然な証言を追及しました。

 その結果、最終準備書面を提出した後に裁判所から勝訴的な和解を前提とした和解勧試がなされましたが、会社側が和解を拒否しました。

 一審判決は、夜間の各ログも労働時間性を肯定する根拠として会社の主張を排斥し、会社と代表者に対する損害賠償責任を肯定しました。

 しかし、会社と代表者が控訴したことから、原告側も控訴しました。控訴審においても、控訴理由書を含め5通の主張書面を提出し、あたらめて労働時間制などについて丁寧に主張しました。

 控訴審でも結審後に和解勧試がなされ、一審判決の水準を維持した和解が成立しました。

解決のポイント

 詳細に文書ファイルや電子メールのログを分析して丁寧に書面や表を作成して、業務内容や労働時間について裁判所の理解が進むよう工夫しました。また、同僚には被災者の労働実態をリアルに証言することができるようリハーサルをする一方、上司の反対尋問については、弁護団で何度も会議やメールで検討を重ね、上司が回答不能となるよう追い込むことができました。

 証拠を詳細に分析して主張し、入念に検討した尋問事項を作り上げることは、弁護士の訴訟活動における基本ですが、これが過労死事件では複雑かつ困難となります。後輩弁護士と弁護団を組み、基本に忠実に取り組んだことが、裁判所を説得することに繋がったといえるでしょう。

過労死(損害賠償)に関するその他解決実績

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