事案と受任前
本件は、契約社員が、経営悪化のため人員整理の必要が生じたとの理由で整理解雇されたことから、労働契約上の従業員たる地位の確認、未払賃金および違法な解雇による慰謝料の支払いを求めた事案です。
会社が契約社員に対して労働契約に基づく債務不存在確認請求訴訟を提起してきたことから、逆に提訴をすることとし、先輩の弁護士から応援を依頼されて代理人に就任しました。
弁護活動と結果
訴訟では、会社の元役員や元経理社員から資料の提供を受けて事情聴取もし、この調査に基づき、人員削減の必要性、整理解雇を選択する必要性、被解雇者選定の妥当性および手続の妥当性がなく、契約社員の整理解雇は違法であることを具体的に主張して、また元役員や元経理社員の証人尋問、会社側の証人に対する反対尋問を行いました。
その結果、東京地裁平成15年12月19日判決(労働判例873号73頁)は、「被告会社の事務所を完全に閉鎖し、従業員全員を解雇しなければならない程の経営上の必要性があったということはできず、また、被告会社は、本件解雇について、原告及び労働組合と誠実に協議することを尽くさなかったものであるから、本件解雇は、客観的で合理的な理由に基づかずにされたもので、解雇権を濫用したものとして、無効というべきである」と、契約社員の整理解雇を無効と判断し、会社に未払賃金の支払いを、会社と役員に慰謝料の支払いを命じる判決を勝ち取ることができました。
解決のポイント
整理解雇では、経営悪化や赤字経営の実態、預金などの資産状況、役員の報酬減額等について、損益計算書より売上高、経費や営業・経常利益(損失)の推移などを、貸借対照表より資産や負債の内容・額などを具体的に分析した上で、被解雇者の選定が妥当であったのか、経営状況に関する説明が解雇前になされたのかを検討します。元役員や元経理社員の協力を得て財務諸表(貸借対照表、損益計算書等)を詳細に分析して主張し、証人尋問に臨んだことが勝訴した理由であると考えます。
なお、有期雇用の契約社員であったため、労働契約上の従業員たる地位の確認は認められませんでしたが、会社が控訴を断念して判決が支払いを命じた未払賃金や慰謝料を支払ってきたので、年を越さずに全面解決することができました。