事案と受任前
本件は、独立行政法人の事務職員(40代男性)が、配置転換された後の職場で書類作成業務が増加するとともに、チームリーダーとして部下の管理や決裁業務も加わったことから、長時間労働が継続し、これに伴い睡眠不足となり、自宅で自殺をした事案です。
被災者の妻が労働組合に相談し、当職が代理人に就任しました。
弁護活動と結果
まず調査として、出勤簿だけでなく、職場での鍵カード入退室記録、イントラアクセス記録およびコンピュータ起動と終了時刻のログおよび文書ファイルの保存・更新履歴などを分析して労働時間を算定するとともに、自宅パソコンのセキュリティログやアプリケーションログも検証しました。また、同僚から事情聴取して詳細な陳述書を作成し、妻の陳述書も作成しました。必要な証拠を揃えた上で、土浦労働基準監督署に労災申請をしました。
その結果、土浦労働基準監督署長は、2010年9月3日、被災者が配置転換後の長時間労働により強度の心理的負荷を受けたことから自殺未遂をしたことを肯定し、労働災害(労災)と認定しました。
解決のポイント
第三者には分かりにくい業務内容を同僚の陳述書から明らかにしたこと、自宅持ち帰り残業や健康状態の変化について妻から丁寧に事情聴取をして陳述書を作成したことが労災認定に結びついたと考えられます。