事案と受任前
本件は、電気工事会社の営業職兼電気設備工(40代男性)が、早朝は現場作業員の出勤管理と割り振り、その後に元請け業者との打ち合わせ、見積り作成、現場での作業に従事し、一人何役もこなす業務に忙殺されて、長時間労働や休日出勤が継続したことから、2005年12月15日、会社で机に向かい作業していたときに突然机に突っ伏し、いびきをかき始めて意識を消失し、急性心不全(心停止)により死亡した事案です。
当初は遺族である妻が単独で労災申請、審査請求をしていたのですが、審査請求が棄却されて再審査請求をする段階で、過労死110番に相談があり、当職が代理人に就任しました。
弁護活動と結果
結論として、再審査請求をした労働保険審査会が労働災害(労災)と認定した逆転勝利の裁決を得ることができました。
審査請求段階までは、被災者の労働実態について正確な主張や事実認定がされてこなかったので、業務資料や下請け業者が作成した作業報告書、パソコンのイベントログやファイル更新時刻などを精査して労働実態を具体的に解明し、労働時間表を作成しました。また、カルテや救急活動報告書を入手して健康状態も調査しました。
労働保険審査会平成21年3月18日裁決は、発症前6か月間に月平均100時間超の時間外労働に従事していたとし、長期間にわたる過重な業務と心停止との因果関係(業務起因性)を肯定して、労働災害(労災)と認定しました。
解決のポイント
客観的な資料を検証するだけでなく、同僚に証言をしてもらい、下請け業者の社長からも作業報告書の提供を受けるとともに証言をしてもらうなど、地道な証拠収集活動を行いました。
デジタル情報を解明する中で労働基準監督署の調査が不十分であり、労災保険審査官の審理も不十分であったことから、労働保険審査会での公開審理ではこの点も強調して意見陳述をしました。
そのため、労働保険審査会は、再審査請求人の主張をおおむね肯定する事実認定を行い、業務起因性を肯定したものです。