事案と受任前
本件は、設計施工監理者(40代男性)が、設計監理の実務と統括、直営店の営業と管理を一人で行い、毎日、深夜の午前3時から5時までの長時間に及ぶ残業を続けたことにより、疲労とストレスを蓄積させて、1999年4月15日、くも膜下出血を発症して死亡した事案です。
当初は遺族である妻が過労死110番に相談してきたので、当職が代理人に就任しました。
弁護活動と結果
タイムカード等による労働時間管理をされていなかったことから時間外労働や休日労働を証明する物的証拠がなかったため、妻だけでなく施工管理をしていた元同僚社員や、直営店のアルバイト店員・顧客の5名から事情聴取をして陳述書を作成し、渋谷労働基準監督署に労災申請をしました。
渋谷労働基準監督署長は、2000年3月28日、被災者が連日の深夜に及ぶ長時間労働に従事していたことを肯定し、労働災害(労災)と認定しました。
解決のポイント
客観的な資料がなくても、協力者を訪問して事情聴取を行い、「証拠を作り出す」弁護活動を行ったことが労災認定に結びつきました。
後日談になりますが、渋谷労働基準監督署は、違法残業と健康診断不実施の労働基準法・労働安全衛生法違反で会社と社長を書類送検し、東京地方検察庁には業務上過失致死罪で社長を刑事告訴しました。東京地方検察庁は、業務上過失致死罪については嫌疑不十分として不起訴としたものの、会社と社長を労働基準法および労働安全衛生法違反で起訴し、東京簡易裁判所は、2002年3月4日、違法な時間外労働および健康診断不実施につき、会社と社長に対し、罰金30万円の有罪判決を言い渡しました。
また、損害賠償については、社長の自宅不動産を仮差し押さえをした上で、起訴日に東京地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起しました。刑事・民事の両面にわたる法的措置を社長が負担に感じ、解決金を支払うとの和解が成立しました。
初動から弁護士が代理人に就いて活動したことが、解決のポイントであると考えます。
なお、依頼者よりコメントをいただきました。詳しくは「依頼者の声」をご覧ください。