40代男性が断裁機を操作中に手指を切断し、後遺障害を負った事案

事案と受任前

 本件は、被災者(40代男性)が、製本断裁機が止まったことから電源のスイッチを切り、裁断用の刃が付けられているところに詰まっていた2、3冊の本を取り出そうとして、右手を同機械の中に入れたとき、急に錘が落ちてきて右手が抜けなくなったところ、錘を上げるには、上にあった刃を一旦下に落として、刃と錘とを一緒に上げないと上がらないような構造になっていたことから、工場長がハンドルを回して刃を落とした結果、右手の母指、示指、中指、環指が切断された事案です。

 利き手の指4本が使えなくなり、就労が困難になったことから、当職が代理人に就任して会社に損害賠償請求をすることにしました。

弁護活動と結果

 東京地裁に損害賠償請求訴訟を提起して、会社は、断裁機の錘が落下しないような安全装置や作業者の手が機械内部に入り込むのを未然に防止する装置を設置し、かつ安全保護具等を使用させる等の安全配慮義務や、断裁機で断裁作業をさせるに当たって、同機の構造・機能、作動方法、その内包する危険性とこれに対処する措置を教示し、断裁作業を担当するのに必要な知識や的確な操作方法を体得させるとともに、同機の錘が突然降下することがあり得ること、紙詰まりがあっても機械内には手などを差し入れないようにすることなど適切な注意・指示を与える等の安全配慮義務を負っていたのに、これを怠ったと主張しました。

 この主張を裏付けるため、労働基準監督署の労災認定記録や、労働基準監督署長が会社に交付した再発防止対策書を裁判手続を利用して取り寄せ、事故態様に関する資料を収集しました。また、被災者、会社の代表者・従業員、代理人の立ち会いのもと、断裁機を作動させながら、操作方法や動き方などを従業員に説明させ、事故当時の状況を本人に説明させて、これをビデオ撮影してビデオテープを証拠として提出し、裁判所に事故状況の理解を深めてもらい、その上で被災者と会社の従業員の尋問を行いました。

 その結果、会社が損害賠償金を支払う勝訴的な和解を勝ち取ることができました。

解決のポイント

 前述した訴訟活動は代理人として当然のことをしたものですが、本件では、さらに被災者、会社の代表者・従業員、代理人の立ち会いのもと、断裁機を販売した会社の担当者に工場まで来てもらい、断裁機に断裁物が詰まった時の機械の作動状況や刃の停止位置、隙間の有無、刃の形状、詰まった物の除去の仕方、ブレーキの作動の仕方、本件機械の基本的操作の訓練などについて説明を受け、これをビデオ撮影してビデオテープを証拠として提出しました。

 販売会社の担当者より、刃のブレーキが効いてなければグラグラしている可能性があること、機械を動かすときには、刃物を使っているものだから、機械の使い方についてトレーニングを受けなければならないこと、マニュアルを見て動かし方や止め方、本が詰まった時とか、安全装置の掛け方や外し方などをトレーニングすることが必要であることの証言を得たことが、功を奏したと考えます。

労災事故(はさまれ・巻き込まれ)に関するその他解決実績

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