事案と受任前
本件は、被災者(40代男性)が、 配管の埋設や交換の工事の現場において、一輪車に乗せていた、土留めに使用するアルミトレンチ(1枚の長さ約1.8m、幅約25㎝、厚さ約5㎜、重さ4~5㎏)を、トラック荷台に移し替える作業をしていたところ、同僚の新入社員が一輪車を倒したことから、一輪車とアルミトレンチ28枚が右足甲部に落下し、右足の骨折と神経麻痺の傷害を負った事案です。
右足関節の運動機能障害、筋力低下や知覚低下などの後遺症があり、就労が困難になったことから、当職が代理人に就任して元請け会社に損害賠償請求をすることにしました。
弁護活動と結果
東京地裁に損害賠償請求訴訟を提起して、元請け会社は、毎日1回、工事現場の安全パトロールをし、現場監督に工事の進捗状況等を報告させ、必要な指揮監督を行っていたことから、下請け労働者に対し、アルミトレンチを積載する場合には、その重量に耐え得る器具を使用させたり、一輪車を使用させないように教育したりする義務を負っていたのに、これを怠ったと主張しました。
これに対し、元請け会社は、下請け労働者を直接指揮監督していなかったことから、被災者に対する安全配慮義務を負わないと主張しましたが、当職が最高裁判決や下級審裁判例をもとに直接の指揮監督関係になくても安全配慮義務を負うと反論しました。
その結果、元請け会社が損害賠償金を支払う和解を勝ち取ることができました。
解決のポイント
本件訴訟は、被災者が二次下請け会社に雇用されていたので、二次下請け会社と一次下請会社も被告にしましたが、当職が代理人に就任する前に被災者自身が低額の和解をしていた事案でしたので、この和解の効力も争いました。ただ、和解により下請け会社2社に対する損害賠償請求が棄却される可能性があったので、元請け会社も被告に加えたのですが、このことが解決につながったと考えます。