事案と受任前
本件は、社会人男性(30代男性)が、海水浴に来ていた際に市営プールを利用し、水泳の授業中にスタート台から逆飛び込みスタート(両手先を伸ばし、体ごと斜めに水に入る動作)をした際、プールの底に頭部を衝突させ、第5-6頸椎を骨折し、頸椎粉砕骨折や頸髄損傷の傷害を負い、四肢麻痺の重篤な後遺障害を残した事案です。
先輩の弁護士から応援の依頼を受けて代理人に就任し、本人とその妻子が、プールを設置運営していた地方自治体に対し、営造物であるプールの利用によって危害を生ぜしめる危険性があり、通常有すべき安全性を有していないから、プールの設置または管理に瑕疵(欠陥)があるとともに、監視体制の強化等の事故発生を未然に防止する義務を怠ったとして、損害賠償請求訴訟を提起しました。
弁護活動と結果
文部省、日本水泳連盟および日本体育施設協会等の文書や写真を提出したり、裁判所に専門家の鑑定や証人尋問を実施させたりして、プールの構造がスタート台を設置しながら逆飛び込みスタートをするには通常有すべき安全性を有していないことを明らかにするとともに、本人の陳述書だけでなく、事故状況を目撃していた第三者に面談して陳述書を作成するなどして、プール監視員が事故を防止するための監視をしていなかったことを明らかにしました。
その結果、地方自治体が損害賠償金を支払う勝訴的な和解を勝ち取ることができました。
解決のポイント
プールでの逆飛び込みスタートが危険であることは調査や研究、裁判例が集積してきましたが、個別の事案では、当該プールが通常有すべき安全性を備えていなかったか、事故を防止する監視体制は整備されていたか、被害者に落ち度はあるのかが具体的に争点となります。
訴訟では、客観的な資料を提出するだけでなく、本人から詳細に事情聴取をしたり、目撃者を訪問して陳述書を作成したりするなどの地道な作業をしたことも、勝訴的な和解につながったと考えます。