就業規則の変更により減給となる従業員が出たら

会社が、就業規則を変更して、基本給、家族手当や住宅手当などの手当を基本給に統一し、担当している業務内容に見合った金額に変更しようとしており、その際、家族構成によって減額となる従業員が出てくるが、賞与を含めれば多くの従業員が現状維持となると説明しているとき、就業規則の変更に労使の合意が必要なのでしょうか。

 労働契約法は、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の事情に照らして不合理なものであるときは、変更の効力を有しないと定めています。

 要は就業規則の変更は合理性があれば、労働者への周知を条件に、その効力を認めます。

 最高裁判例は、賃金などの重要な労働条件の変更については、高度の必要性に基づく合理性が必要であると判断しています。労働契約法は判例法理を踏襲していますので、同法でも賃金減額の効力は高度の合理性が要求されると解されます。

 就業規則の変更の効力は以上の基準により判断されますので、一部の労働者が不利益となる場合であっても、会社は過半数労働組合または過半数代表者と合意することが必要ではありません。

 ただし、会社が労働者全体にどのような説明をしたのかは変更の効力を判断する際の考慮事情となります。

 次に、就業規則の変更に労使の合意が必要ではないとして、変更の効力はどのように判断されるのでしょうか。

 給与制度の変更により減給となる従業員がいるのであれば、不利益があるといえます。

 会社は多くの従業員が新給与制度でも給与額は現状維持になると説明しているとしても、賞与が業績によって減額されるのであれば、臨時に支払われる賞与を除いた月例給与で不利益がどの程度あるかについて検討する必要があります。

 一般論として、一部の労働者のみに大きな不利益を与える場合は、就業規則の変更が無効となる可能性があります。

 この場合、家族手当や住宅手当を段階的に減額していくとの経過措置を設けたり、他に代償措置を講じたりしているかなどが考慮されます。仮にトータルで減給となる従業員に対する経過措置や代償措置がないのであれば、不利益の程度によっては、減給が無効になる可能性があります。

 また、家族手当や住宅手当の廃止が、同業種の給与制度と比べて異例であれば、社会的に相当ではないとして、変更の効力を否定する事情となります。

 就業規則の変更の効力はケース・バイ・ケースの判断となるので、労働者側として会社との対応をどのようにしていくのかについては、弁護士に相談することをお勧めします。

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