建設現場においてトラックの荷台で荷物の積込み作業をしていたところ、身体のバランスを崩したことにより転落して頭部を受傷した場合、会社に損害賠償請求をすることはできるのでしょうか。
トラックの荷台には荷物が置かれており、足場となるスペースが狭いので、転倒や転落の危険性があります。これに対し、会社は、バランスを崩したのは労働者の自己責任であるとして損害賠償を拒否するケースがあります。
この点につき、金沢地裁判決(平成9年9月26日)は、重量のある蓋を携帯しての浄化槽上での作業はバランスを崩す危険性があるから、これを除去すべく、浄化槽の上に登っての作業を極力避けるように指示するとともに、他の倉庫係に浄化槽の搬入作業を手伝うように指示し、搬入を担当するトラックの運転者らに外した浄化槽の蓋は搬出の際取り出しやすい場所に積み込むように指示するなどの処置を採らなかったとして、安全配慮義務違反があると判断しました。
また、高所作業では、屋根等から転落して負傷する労災事故が多いのですが、裁判例では、安全帯の着用を徹底させるとの安全配慮義務が認められています。
したがって、トラック荷台での荷物積込み作業に転落の危険があるならば、会社としては、この危険を防止するのに必要な措置を講じるとともに、▼荷台での作業を避けるように指示をする、▼身体のバランスを崩さないよう助手を配置する、▼他の従業員に積込みをしやすい場所に荷物を置くよう指示をする、▼トラックの荷台で作業をする際には荷台に接続した足場を設けることを徹底するなどの安全教育を実施するとの安全配慮義務を負っていたといえます。会社がこれを怠っていたのであれば、損害賠償責任を負うことになります。
ただし、荷台でバランスを崩したことにも落ち度があるという場合は、過失相殺により損害額が減少します。労働者側の過失割合が大きい場合は示談により解決した方がよいケースもありますので、会社との交渉段階から弁護士に相談されることをお勧めします。