メンタルヘルス(心の健康)に問題を抱える労働者が増え、会社から退職勧奨や解雇通告を受けるケースも増加しています。特に「うつ切り」と呼ばれる、うつ病の社員の解雇が急増しています。本人が働きたい、働けると思っているのに、退職勧奨を受けたらどうすればいいでしょうか。
まず、退職勧奨なのか解雇通告なのかを見極めることが重要です。使用者が労働者に労働契約の解除の合意を申し入れるのが退職勧奨、一方的に契約を解除するのが解雇通告です。日本では労働も契約だという意識が弱く、あいまいな言い方がされることが多いため、労働者が退職勧奨を解雇通告と混同することが少なくありません。
その上で、退職勧奨についてですが、賃金収入の道が絶たれるのに、理由もなく合意する義務はありません。納得できなければ退職を断るべきです。短期間に多数回、長時間、何度も行われた退職勧奨が不法行為とされ、使用者に損害賠償責任を負わせた最高裁判例があります。
次に解雇通告についてですが、タイミングとしては3つが考えられます。①休職などの措置をせずに、いきなり、②休職期間満了時に、復職できないと判断された、③復職後に、能力欠如や健康不良と判断された、です。
労働契約法は、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない解雇を制限しています。裁判例を見ると、「会社がなすべきことをしていない」場合は合理的な理由がない、相当でないとされ、労働者は解雇権の濫用として解雇無効を主張できます。病気が治る可能性があるのに休職をさせないで解雇する場合がそうです。
配置転換(異動)や勤務軽減の検討も必要でしょう。職場復帰(復職)の可否を判断する時に、以前の仕事への復帰が無理でも、会社は他にできる仕事がないかを検討すべきだとの最高裁判例が出ています。職場復帰(復職)後は、使用者は産業医と連携して労働能力の評価や病気の治療状況を確認すべきです。一定期間の労働時間の短縮措置なども必要です。ただ、配置転換(異動)や勤務軽減措置が、逆にストレスとなって病気の悪化を招かないようにしなければなりません。
会社が退職勧奨を拒否したことを理由に解雇するという場合、訴訟や労働審判の申立てをしますので、弁護士にご相談ください。