高齢の親が遺言書を作る場合-検認、公正証書、遺留分侵害額請求

 高齢の母が「遺言書を作りたい」といい、母に万一のことがあれば、財産は姉妹で分けることになるという場合、母が死亡してから、相続でもめないために、どんな遺言書にしたらいいでしょうか。

 遺言書には、通常の方式でよく使われているものに①自筆証書遺言、②公正証書遺言の2種類があります。

 自筆証書遺言は遺言者が遺言の本文や日付を手書きしなければならないのですが、相続財産の全部または一部の目録を添付する場合は、この目録を手書きする必要はなく、ワープロで作成することもできますし、預金通帳や登記事項事項証明書などを添付することもできます。ただし、本文と添付資料の日付けとの整合性に注意しましょう。

 遺言書が出来上がったら、本文だけでなく、目録の毎葉(両面印刷の場合はその両面)にも、遺言者が署名押印をします。なお、押印については、同じ印鑑を押捺する必要はありません。

 自筆証書遺言は遺言書を作るのに費用はかからず、証人は不要なので、遺言者が「自分でいつでも書ける」という長所があります。しかし、紛失や、相続人等による隠匿・変造のおそれがあり、形式が整わないと無効になるという短所があります。これらの短所については、遺言者が自ら遺言書保管所(法務局)に出頭して遺言書の保管を申請できるようでしたら、解消できます。しかも、遺言書保管制度を利用すると、家庭裁判所での検認手続が不要になるとのメリットもあります。

 とはいえ、相続でもめごとが予測されるようでしたら、費用はかかっても公正証書遺言を作っておくのがよいです。

 母が90歳を超えて物忘れが多くなっているといったときは、遺言書を早めに作った方がよいでしょう。認知症だとすると、後日、遺言をする能力がなかったとして無効とされることもありえます。医師の意見を聞き、遺言をするのに問題がなければ、診断書をもらっておいた方がよいでしょう。

 公正証書遺言は公証役場で作ります。遺言者が口授した内容を公証人が書き、証人2人以上の立会いのもとで作成します。証人を含めた全員で署名、押印します。公証役場には、遺言者の実印と印鑑登録証明書、相続人の戸籍謄本や遺産を特定する資料(不動産登記簿謄本など)、また証人の住民票などの書類を持っていきます。証人には、未成年者、推定相続人、遺言で財産をもらう人などはなれません。認知症の程度によっては医師を証人に入れておいた方がよいでしょう。遺産の目的となる価額に応じて決められた公証人の手数料が必要です。公正証書遺言は家庭裁判所の検認手続きが不要となり、遺言執行者が速やかに遺言執行をすることができますので、これがメリットとなります。

 遺言書は、被相続人がどの相続人にどの遺産を相続させるのかを決めることができます。メリットとしては、死後の紛争を予防することができる、被相続人が最後の意思表示をすることができることが挙げられます。遺言の作成を前向きに検討されたらいかがでしょうか。

 自筆証書遺言でも、公正証書遺言でも、どのように遺言を作成したら相続でもめないのか、遺留分侵害額請求を避けるにはどうしたらよいか、遺言執行者に誰を選任するかについては、弁護士に事前にご相談ください。

 遺言者が亡くなった後は、自筆証書遺言(遺言書保管所に保管された遺言を除く)であれば、家庭裁判所で検認をしなければなりませんが、この申立ての代理人を弁護士がすることもできます。

 また、遺言により不動産を相続登記しますが、法定相続分を超える権利の承継については登記をしなければ第三者に対抗することができません。つまり、他の相続人が相続した不動産を第三者に譲渡して所有権移転登記をしたら、自身が遺言により取得したことをその第三者に主張することができなくなります。そのため、相続したらできるだけ早く相続登記をする必要があります。登記手続の申請は、司法書士でなくても、弁護士が代理人として申請することができます。

 遺言の作成だけでなく、その後に発生する法律問題についても、お気軽にご相談ください。

 逆に遺言により遺産を相続できなかったとしても、配偶者、子供、祖父母が相続人であれば、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。遺留分侵害額請求権は、相続の開始と遺留分侵害の贈与・遺贈があったことを知ったときから1年以内に行使しなければなりません。具体的な金額を算定しなくても、まずは遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示を行うことが肝要ですので、お早めにご相談ください。

 

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