会社行事参加中の怪我と労災認定

地域貢献活動の一環として、社員ボランティアを募って近隣の清掃活動を行っている最中に社員が事故に巻き込まれてケガをした場合、労働災害(労災)となるのでしょうか。

 会社行事に参加している最中の労働災害(労災)について、行政解釈は、主催者、目的、内容(経過)、参加方法、運営方法、費用負担等を考慮して総合的に判断することとしています。会社行事の世話役等が自己の職務の一環である場合(社内的には庶務課員、対外的には営業課員など)は一般的に業務遂行性が認められ、労災保険給付が支給されます。他方、それ以外の場合は、業務命令があったり、会社行事への参加が強制されていなかったりするのであれば、業務遂行性が認められないことが多いです。

 会社が地域貢献活動の一環として社員ボランティアを募って近隣地域の清掃活動を行っている場合、社員が企画・運営担当者としてボランティア活動に参加したというのであれば、労災認定されます。他方、企画や運営をしていない社員が、あくまでも任意で、費用も自己負担で参加したというのであれば、ボランティア活動が業務であるとは認められないでしょう。これに対し、上司から事実上の参加命令があり、会社が費用負担をし、ボランティア活動の時間に相応する賃金が支払われていたというのであれば、業務遂行性が認められる可能性があります。

 会社による企画・運営、会社の全額費用負担、出勤扱いという事情があっても、総合判断で業務遂行性が否定される例もあり、ケース・バイ・ケースです。業務遂行性の判断は困難なことが多く、事案や判断機関によって判断が分かれることになってしまい、この種の紛争が絶えず、長期化することになります。

 会社がボランティア活動をするのは、地域貢献とはいえ、企業の営業活動において必要かつ有益であるからにほかなりません。したがって、目的が営業とは直接関連しなくても、会社が企画・運営し、費用を負担し、参加者には出勤扱いの措置をして、従業員に参加を指示または要請したなどの事情がある場合には、会社として業務遂行性を認めるべきでしょう。

 会社としては、ボランティア活動などの会社行事を企画するにあたって、会社が全額費用を負担し、参加者には出勤扱いの措置をするなどして業務の一環であることを従業員に十分説明し、多くの参加を呼びかけることが求められます。このような措置を講じることにより、多くの従業員の参加を得やすくなり、地域貢献という目的が達成されるだけでなく、社員の親睦にもつながり、その結果、社内の人間関係や事業の運営を円滑にすることができるからです。

 会社が会社行事での事故を仕事中と認めてくれないため、労災申請ができないでいるという場合は、会社との交渉や労働基準監督署への労災申請について弁護士が代理人となることができますので、ご相談ください。

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