営業職から経験のない経理職に配置転換(異動)されたが、簿記や会計は自宅で学習するよう会社から指示された場合、その学習時間は労働時間と扱われ、残業代が発生するのでしょうか。
賃金が発生する労働時間に当たるかは、客観的に使用者の指揮命令下にあるかどうかにより定まるというのが最高裁判例です。
指揮命令下にあるかどうかは、簡潔に言うと、業務性があるか、指示があるかにより検討します。
一般的な就業規則には、会社が業務に関する教育を実施すること、労働者はその教育を受ける義務があることが定められています。このような規定があれば、会社は、経理業務が未経験であることを知って配置転換した当該労働者に対して業務に必要な教育を実施しなければなりません。仮に就業規則に規定がなくても、労働契約上、会社は、経理業務が未経験であることを知って配置転換した当該労働者に対して業務に必要な教育を実施しなければならないと考えられます。
会社が教育を実施せず、労働者が自宅で学習するよう指示したのであれば、労働時間性を肯定する事情となります。
また、経理業務の遂行に必要な知識を習得するために自宅で簿記や会計の学習をしたのであれば、業務性が認められます。
したがって、自宅での学習時間も労働時間となります。