清掃時間中に小学6年の担任教諭が学級委員に「先生がいなくても掃除はできますか」と尋ねたところ、学級委員が「不安です」と答えたのに、「しっかりやってください。何かあれば職員室にいますから」と言って教職員室に戻ったところ、普段から清掃中に悪ふざけをする同級生が振り回した清掃用具が、クラスメイトの小学6年生の左目眼球に直撃したことから失明しました。この場合、児童は、学校運営者に慰謝料などの損害の賠償を請求することはできるのでしょうか。
教諭は、学校教育における授業の際には、事故の予防に注意して安全第一を中核とし、常に児童の動静を把握し監視を怠ることなく、指導を行うべき安全配慮義務を負っています。
清掃は授業そのものではありませんが、児童が日常的に利用している教室を清掃することは学校教育の一環ともいえます。清掃時間に担任教諭が監視していなければ、児童同士がふざけて事故を起こす危険が高いのですから、具体的には、担任教諭が児童の清掃活動を指導監督して、児童の悪ふざけによる事故を未然に防止するとの安全配慮義務を負っているといえます。
担任教諭は、学級委員が教諭不在となることに不安を訴えているにもかかわらず、清掃活動を指導監督することなく教職員室に戻りました。とすれば、児童は、安全配慮義務に違反したとして、学校運営者に慰謝料などの損害賠償を請求することができると考えられます。
ただし、児童同士が箒でチャンバラごっこをするなどの悪ふざけをしていたという事案では、小学6年生であれば事理を弁識するに足りる知能が備わっているともいえ、事故発生に落ち度があったことになり、損害が過失相殺されることになります。
他方、担任教諭が教室内でふざけないよう指導し、清掃用具を振り回したら危険であることを説明していたのに、目を離した隙に児童同士が悪ふざけをして怪我をしたとか、清掃ではなく、自習時間中に教諭が他の生徒を指導中に児童同士が悪ふざけをして怪我をしたといった場合は、教諭の安全配慮義務違反が否定されることがあります。
そもそも学校に損害賠償責任が認められるのか、生徒の過失相殺の割合はどの程度になるのかはケース・バイ・ケースの判断となりますので、まずは弁護士にご相談ください。