信号がない交差点で、自転車に乗って直進していて、右方向から走ってきた車と接触して怪我をしたとき、車の運転手が「飛び出した方が悪い」と言って、連絡先も教えないまま、いなくなってしまった場合、パートタイムの仕事を休んだ賃金分を損害賠償請求することはできるのでしょうか。
交通事故の場合、運転者はただちに運転を停止し、負傷者を救護しなければならないことになっています。また交差点内の事故ですから、相手方にまったく責任がないとはいえません。
交通事故のような第三者行為災害の場合は、加害行為を行った第三者に対して民法上の損害賠償を請求することができます。もし警察の捜査で相手が見つかれば、交渉をして示談金を支払ってもらえます。
またひき逃げや無保険車による事故の被害者に対して、自賠責保険の一部を政府が管理し、政府保障事業が行われています。これを利用して保険会社に請求すれば、自賠責保険に準じた支払いを受けられます。
この場合、健康保険や労災保険で国が支払う給付を差し引いた残りを保障することになっているので、保険会社から、労働災害(業務災害、通勤災害)に当たるときはまず労災申請をしてほしいと言われます。
事業主は、従業員を一人でも雇えば、法律上、労災保険に加入しなければいけないことになっています。
勤め先が個人経営の店で労災保険に入っていないとしても、従業員が労働災害(業務災害、通勤災害)によって負傷した場合、労災保険給付が受けられます。後から事業主が労災保険料を徴収されることになります。たとえ労災保険に未加入でも、怪我の治療は健康保険を使わなければならず、治療費の負担が大きくて困るということはありません。通勤途上の交通事故なので、通勤災害の扱いになります。
労災保険からは、怪我で働けないとき、休業4日目以降の休業日1日について事故前3か月間の平均賃金の8割分が出ます。また、怪我が治るまでの治療費が支給されます。後遺障害がある場合にはその内容や程度に応じた労災保険給付も受けられます。
示談金、自賠責保険、労災保険、健康保険など、いくつかの保険や法律がからみ合い、複雑ですので、ご不明の点があればご相談ください。
また、怪我が治ったけれども損害保険会社の提示金額に不満がある、症状固定になったけれども後遺障害の認定に不満があるといった場合、訴訟や調停、公益財団法人日弁連交通事故相談センターへの示談あっせんなどの申立てを行います。これらの手続きをとる前に、後遺障害等級について異議申立てをすることがあります。いずれも弁護士が代理人となって法的な判断をすることが望ましいです。時間が経過すると消滅時効が成立する場合もありますので、資料をお持ちになってお早めにご相談ください。