仕事で車を使う人は少なくないでしょう。万一、事故を起こしたとき、自分が怪我をした場合の労災保険や、相手に怪我をさせた場合の会社の使用者責任はどうなるのでしょうか。
営業活動など仕事をしている最中の交通事故は、労働災害として労災保険給付が支給されます。しかし、交通事故の原因が労働者の故意や重大な過失によるものだった場合は、労災保険給付のすべて、または一部が支給されません。▼飲酒運転や居眠り運転、無免許運転をした、▼スピードを出し過ぎた、▼信号無視をした、▼踏切で左右を確認しなかった場合は、重大な過失があったと認められる可能性があります。
第三者に怪我をさせた場合は、交通事故を起こした労働者に損害賠償の責任があるのは当然ですが、同時に雇用している会社も、その交通事故について故意や過失がなくても、労働者の選任や事業の監督について相当な注意をしていない限り、使用者責任を負います。 ただ、被害者に損害賠償をした会社は、交通事故を起こした労働者に対し、求償することができます。
どの程度の求償が認められるのかはケース・バイ・ケースですが、事業の性格・規模、施設の状況、交通事故の状況、事故予防や損失分散に対する会社の配慮、労働者の業務内容、勤務態度、労働条件などの事情を考慮して総合的に判断されます。過去には、小型貨物自動車の運転手に臨時に重油をほぼ満載したタンクローリーを運転させた際に発生した交通事故につき、会社が対物保険や車両保険に加入していなかった上に、その運転手の勤務成績は普通以上であったなどのことから、会社の運転手に対する求償額を4分の1にとどめるとした裁判例があります。
会社が労災申請に協力してくれない、会社から損害賠償金の全額を求償されたといった場合は、会社と交渉したり、労働基準監督署へ労災申請したりするのに弁護士が代理人となることができますので、ご相談ください。