自転車が加害者となる交通事故の損害賠償

近年、自転車が歩行者や他の自転車と衝突し、自転車運転者が加害者となる交通事故が多発しており、社会問題になっています。

 道路を歩行しているとき、また自転車を運転しているときに、他の自転車が飛び出してきて衝突したことにより怪我をしたら、飛び出してきた自転車の運転者に対して損害賠償請求をすることはできるのでしょうか。

 自転車は軽車両であり、自動車損害賠償保障法の適用はありませんが、その運転者は、自らの過失により交通事故を起こして他人に怪我を負わせた場合、人身傷害や物損に関する損害賠償責任を負います。

 また、直接の加害者である自転車運転者だけでなく、労働者が業務遂行中に交通事故を起こしたのであれば使用者が、児童・生徒が授業や学校行事中に事故を起こしたのであれば学校運営者が、行事参加者がその行事中に事故を起こしたのであれば行事主催者が、それぞれ損害賠償責任を負うことがあります。被害者としては、誰が損害賠償責任を負う主体となるのかを検討することが必要となります。

 なお、自転車には自動車損害賠償保障法が適用されないので、自転車の保有者が損害賠償責任を負うことはありません。

 ところで、自転車の運転者が歩行者や他の自転車運転者に重大な人身傷害を負わせると損害賠償額が数千万円にもなります。小学5年生の男子が自転車に乗り高速度で坂道を下っていたときに60代の女性と衝突して、その女性が重い後遺症を負った事案では、約9500万円の損害賠償金の支払いを命じる判決が言い渡されました。

 しかし、軽車両である自転車に乗るのに、傷害保険や個人賠償責任保険、自転車保険に入っていない人が多く、損害賠償をする資力がないことが問題です。

 また、過失割合は交通事故の状況に応じて変化するものですが、自転車事故では、現時点において、自転車対歩行者、自転車対自転車の交通事故における過失割合の類型が明確に定まっているわけではないので、過失割合の小さな違いものの損害賠償額では大きな違いとなります。例えば、自転車は夜間に灯火して走行する義務がありますが、無灯火で運転した場合は、一般論として、その自転車運転者の過失割合は大きいといえます。ただ、具体的には、交通事故が発生した時間、場所、街灯などの事故現場周辺の状況、事故態様などの諸事情により判断されますし、被害者が歩行者か自転車運転者かによっても加害者の過失割合が異なってきます。

 そのため、被害者と加害者との間でトラブルが長引くことがあります。

 そこで、自転車が加害者となる交通事故に遭ったら、警察に通報し、実況見分をしてもらい、事故態様を特定しておくことが重要です。その上で、被害者自身では加害者と交渉できないということであれば、弁護士に依頼することをお勧めします。

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