東日本大震災で公共交通機関が麻痺して帰宅に苦労した経験から、万一の事態に備え、または健康を目的に自転車通勤をする人が増えています。
同時に自転車同士の交通事故も増えており、自転車を運転していた加害者が保険に加入していないことから、被害者は怪我をして仕事を休んだのに、すぐに治療費や休んだ期間の賃金を支払ってもらえないことがあります。
通勤に自転車を利用している労働者については、自転車通勤の途中で交通事故に遭い怪我をした場合、通勤災害として労災保険給付の支給請求をすることが考えられます。
通勤災害として認められる要件は、自宅と会社の間を合理的な手段と経路で、就業に関して移動していたことです。判断をするのは労働基準監督署長になりますが、電車やバスの運行が頻繁な都心部の会社ほど、交通事故のリスクを伴う自転車や自動車の移動より、公共交通機関を使った方が合理的と判断されやすいです。また、自転車通勤は自由度が高い分、途中で寄り道することも多くなります。その寄り道が日常生活に必要な買い物であればよいのですが、デパートで長い時間かけてショッピングをするといった場合は、通勤経路の「中断」や「逸脱」ととられ、通勤途中と認定されなくなります。通勤経路をいったん外れる場合でも、子どもを保育園に送迎しなければならないなどの事情があれば、その後に通勤経路上に戻ったときに通勤途中と判断されますが、退勤後にサークル活動に参加するために自転車で別の場所に行った場合は、仕事との関連性がないため、そもそも通勤とみなされません。このように自転車通勤が合理的な手段と経路となるかどうかはケース・バイ・ケースの判断となります。
自転車対自転車、自転車対歩行者の交通事故では、過失割合だけでなく、後遺症が残った場合、自動車事故と違い後遺障害等級が認定されないので、後遺障害の有無、内容、程度が争いになることがあります。ただ、通勤災害と認定されていれば、労働基準監督署長が後遺障害の有無や程度も認定するので、認定された後遺障害等級をもとに逸失利益や慰謝料を算定することができます。
このように通勤災害として労災保険給付を受けて経済的な基盤を確保してから、加害者に対して損害賠償請求をするとよいでしょう。
弁護士が加害者との交渉から代理人になることができますので、通勤災害の認定や後遺障害等級、慰謝料など損害の算定について問題がありましたら、お早めにご相談ください。