解雇無効

121003_SD0020001 労働契約の終了形態としては、辞職(労働者からの労働契約終了の意思表示)、合意解約(労使が労働契約終了に合意した場合。希望退職募集の応募など)、解雇(使用者からの労働契約終了の意思表示)、契約期間の満了があります。このうち労使紛争になることが多い形態は解雇や雇い止めです。

 解雇が使用者の一方的な意思表示であることから、上司や経営者から「辞めろ」と言われたとしても、それが解雇であるのか、退職勧奨にすぎないのか、また解雇予告であるのか、それとも即時解雇であるのかを見極めることが重要です。

 「辞めろ」と言われても、その場では返答をせず、すぐに対処方法を含め弁護士に相談しましょう。

 

1 解雇の種類

 解雇としては、次のものがあります。

  1. 普通解雇(能力・適性の欠如、勤務態度不良などを理由とした通常の解雇)
  2. 懲戒解雇(重大な規律違反があった場合に懲戒処分として行われる解雇)
  3. 整理解雇(経営上の都合による解雇)

 解雇事由によって、解雇無効の主張の仕方が異なってきます。解雇を争う場合は、その方針を決めるためにも弁護士に相談することをお勧めします。

 

2 解雇の手続

 解雇の手続として、次のものが労働基準法に定められています。

  1. 業務上の傷病または産前産後の休業期間およびその後30日間の解雇禁止
  2. 30日前の解雇予告または30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払
  3. 解雇理由等の退職証明書の交付
  4. 請求から7日以内の金品の返還

 1.の手続に違反した解雇は無効となります。

 2.の解雇予告手当を支払わなかった場合、予告期間をおかず、また解雇予告手当の支払いをしないでなされた解雇の通知は、即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、通知後30日の期間を経過するか、または解雇予告手当の支払いをしたときに効力を生ずる、というのが最高裁判例です。

 解雇を通告されたら、使用者の解雇理由を早期に特定し、かつ明確にするため、3.の退職証明書の交付を請求しましょう。

 

3 整理解雇

 整理解雇は、経営者側の都合による解雇ですので、次に述べる4つの要件(要素)が裁判例で認められています。

 この要件(要素)に該当するか否かは厳格に判断されるため、整理解雇されたか、経営上の理由に退職勧奨されたときは、整理解雇に当たるかどうかを弁護士に相談することが望ましいです。

(1) 人員削減の必要性

 過去数年間の収支や借入の状況、資産状況、人件費や役員報酬の動向、新規採用などの人員動向、業務量などの事情から、経営危機に陥って人員削減措置が要請されるかどうかが判断されます。

(2) 解雇回避努力義務

 賃金や役員報酬の削減、労働時間短縮、配転・出向、一時帰休、希望退職募集、新規採用の停止などの雇用調整手段を実施したか(解雇回避努力)により、整理解雇をする必要性があるかどうかを判断します。

 たとえ希望退職募集をしていても、それだけで誠実な解雇回避努力を行ったとはいえません。

(3) 人選基準の合理性と選定の公正性

 勤務成績や能力等の労働力評価、勤続年数等の企業貢献度、年齢、労働者の再就職可能性や家計への打撃等の労働者の生活評価、労働者の雇用形態といった観点から、整理解雇対象者を選定する合理的な人選基準を設定し、その人選基準により公正に選定されたかどうかを判断します。

 ですから、誠実、勤勉、業務に熱心でないもの、能力の劣るもの、職場規律を遵守しないもの、病弱者といった人選基準は抽象的です。

 また、定年年齢までの残存期間における賃金に対する被用者の期待も軽視できず、再就職が事実上困難な年齢、早期退職の代償となるべき経済的利益や再就職支援なしに人選基準とすることは、解雇後の生活に対する配慮を欠く結果となると判断した裁判例があり、中高年であるというだけで人選基準が合理的とはいえません。

 さらに、パートタイムで雇用されていても、正規社員と同様の仕事をしている、契約更新の回数が多い、更新手続きが形骸化しているなどの事情があれば、実質的に期間の定めがない労働契約と同視すべきであり、非正規社員であるというだけで人選基準が合理的とはいえません。

(4) 解雇手続の妥当性

 使用者は、整理解雇の必要性と内容(時期、規模、方法)について納得を得るため、事前に説明を行い、誠意を持って協議すべき義務を負います。

 

[Q&A]

 解雇・退職のよくあるケースは「Q&A:解雇・退職」をご覧ください。

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