弁護士費用算定の基礎となる経済的利益額
着手金は事件等の対象の経済的利益の額を、報酬金は委任事務処理により確保した経済的利益の額をそれぞれ基準として算定します。
1 損害賠償、残業代・未払給与、家賃・地代、離婚に伴う財産分与
損害賠償や残業代・未払給与、家賃・地代、離婚に伴う財産分与などの金銭請求事件は、債権総額(遅延損害金を含む)が経済的利益額となります。
過労死の死亡事案では、逸失利益、慰謝料、葬儀費用が主な損害となり、この合計金額が債権総額となります。例えば、逸失利益が4850万円、慰謝料が3000万円、葬儀費用が150万円とした場合、合計8000万円が経済的利益額となります。
2 労災保険
- 労災保険給付が一時金である場合は、その支給額が債権総額となり、これが経済的利益額となります。
例えば、遺族補償一時金では、給付基礎日額を1万円とすると、労災保険給付額が給付基礎日額の1000日分、遺族特別一時金が300万円であるので、合計1300万円が経済的利益額となります。 - 労災保険給付が年金である場合は、過去分(最初に年金が給付されるまで)の給付は債権総額、また、将来分の給付は継続的給付債権で期間が不定なので、将来7年分の給付総額となり、過去分と将来分の合算額が経済的利益額となります。
例えば、遺族補償年金では、給付基礎日額を1万円とし、妻1人と子1人が遺族であるとすると、労災保険給付の年額が給付基礎日額の193日分、遺族特別一時金が300万円となります。年金は死亡時から支給されるので、労災認定までに死亡時から2年を要したとすると、過去分の経済的利益額は2年分の386万円に300万円を加えた686万円となります。将来分の経済的利益額は、遺族数が2人で変更ないとすると、7年分の1351万円となり、過去分を加えた2037万円が経済的利益の総額となります。 - 労災認定を受けた後に、使用者より法定外上積み補償金の支給を受けたときは、その金額が経済的利益額に合算されます。
3 相続事件
相続事件に関する経済的利益の額は、次のとおり算定します。
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- 遺産分割請求事件は、対象となる相続分の時価相当額。ただし、分割の対象となる財産の範囲および相続分について争いのない部分については、その相続分の時価相当額の3分の1の額
- 遺留分侵害額請求事件は、対象となる遺留分の時価相当額
4 不動産事件
不動産事件に関する経済的利益の額は、次のとおり算定します。
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- 賃料増減額請求事件は、増減額分の7年分の額
- 所有権は、対象となる物の時価相当額
- 占有権、地上権、永小作権、賃借権および使用借権は、対象となる物の時価の2分の1の額。ただし、その権利の時価が対象となる物の時価の2分の1の額を超えるときは、その権利の時価相当額
- 建物についての所有権に関する事件は、建物の時価相当額に、その敷地の時価の3分の1の額を加算した額。建物についての占有権、賃借権および使用借権に関する事件は、3.の額に、その敷地の時価の3分の1の額を加算した額
- 地役権は、承役地の時価の2分の1の額
- 担保権は、被担保債権額。ただし、担保物の時価が債権額に達しないときは、担保物の時価相当額
- 不動産についての所有権、地上権、永小作権、地役権、賃借権および担保権等の登記手続請求事件は、2.、3.、5.および6.に準じた額
- 共有物分割請求事件は、対象となる持分の時価の3分の1の額。ただし、分割の対象となる財産の範囲または持分に争いのある部分については、争いの対象となる財産または持分の額
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5 弁護士費用
事件の種類ごとの弁護士費用につきましては、「法律相談・弁護士費用」をご参照ください。