過労死行政訴訟判例(脳疾患・心臓疾患 自殺)における労災認定の動向

1 最高裁判例の動向

 最高裁判所は、脳疾患・心臓疾患(過労死)の労災を認めなかった労働基準監督署長や地方公務員災害補償基金の処分の取り消しを求める行政訴訟において、労働者側勝訴の最高裁判決をいくつも言い渡しています。

 一つの転機となったのが、2000年7月17日、2つの過労死事件について言い渡された、労働者側勝訴の最高裁判決です。この最高裁判例は、単に労働者側が勝訴したというだけではなく、長期間の過労と疾病との因果関係を認めました。しかも労働時間(労働の量)だけでなく、労働の質の過重性も考慮した点で画期的なものでした。

 これを契機に、2001年12月12日、脳疾患・心臓疾患(過労死)の労災認定基準が改定されることになり、認定件数が増加しました。

 もともと過労死の分野では、行政訴訟としては原告勝訴率(行政側敗訴率)が高かったのですが、2000年の最高裁判例後は最高裁や地裁、高裁において多数、労働者側が勝訴する判決が出ています。2001年に脳疾患・心臓疾患(過労死)の労災認定基準が改定された後も、この基準にとらわれることなく、労働実態を見て、裁判所は業務起因性を認めており、行政よりも司法の方が救済範囲が広いといえます。

2 脳疾患・心臓疾患(過労死)労災行政訴訟の動向

 行政機関は労働時間を重視する傾向がありますが、裁判所は、労災認定基準には拘束されず、他の質的な要因も考慮されており、必ずしも残業時間にとらわれていません。不規則勤務や交替制・深夜勤務は、睡眠が細切れになり疲労をためやすいことなどから、そうした労働自体の過重性を認めています。

 最近の下級審裁判例は、たとえ高血圧、高脂血症、肥満、喫煙等のリスクファクターが認められたとしても、また過去に狭心症や心筋梗塞、脳梗塞等を発症していたとしても、被災者の基礎疾患は、確たる発症因子がなくてもその自然経過により脳疾患・心臓疾患を発症する寸前にまで進行していたとは認められないと判断する傾向にあります。

3 過労自殺労災行政訴訟の動向

 労災申請件数の増加に伴い、精神障害・過労自殺事件の行政訴訟も増え、裁判例が集積してきました。近時は、残業だけでなく、精神障害事案に多く見られるハラスメントを心理的負荷と認める裁判例や精神障害発病後の心理的負荷を認める裁判例もでてきました。

 

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