残業代
1 残業の割増賃金
(1) 割増率
- 時間外労働(休日・深夜労働ではない) 25~50%以上
- 休日労働(深夜労働ではない) 35%以上
- 時間外労働で深夜労働の場合 50~75%以上
- 休日労働で深夜労働の場合 60%以上
- 休日労働が8時間を超えた場合 35%以上
- 法内残業(8時間まで) 0% ただし、就業規則等に定めがあれば別です。
割増率が法定の下限どおりであったとしても、労働時間制度や賃金制度、後述する除外賃金などが企業によって異なりますので、必ずしも単純計算できるわけではありません。就業規則や賃金規程を解釈し、企業や職種ごとの残業代を計算する必要があります。そのため、未払残業代がある場合は弁護士に相談することが望ましいです。
(2) 割増率の引き上げ
残業が月60時間を超えた場合には残業代の割増率が25%から50%に引き上げられています。これは法定の義務です。
また、引上げ分(25%分)の残業代の支払に代えて、有給の休暇を付与することができます。この代償休暇については、従来、職場のなかでは違法に実施されていたところもあり、労使協定を締結する際には注意が必要です。なお、労働者が実際に有給の休暇を取得しなかった場合には、50%の残業代の支払が必要です。
これに対し、1か月に45時間を超えて残業を行う場合には、あらかじめ労使で特別条項付きの三六協定を締結する必要があります。この協定において月45時間を超える残業に対する割増賃金率を25%を超える率で定めるよう努めること、月45時間を超える残業をできる限り短くするように努めることが使用者に課されています。
2 管理監督者の残業
(1) 適用除外の範囲
労働基準法では、監督・管理の地位にある者(管理監督者)または機密の事務を取り扱う者は、労働時間、休憩および休日に関する規定が適用除外となりますが、深夜労働の規制や年次有給休暇は除外されません。
適用除外の結果、残業代は発生しないことになります。しかし、会社から管理監督者と指定されたからといって残業代が一切発生しないとは限りません。労働基準法上の管理監督者に当たらないことも多いです。
それでは、管理監督者にはどのような場合に該当するのでしょうか。
(2) 定義
管理監督者であるか否かは、「一般には局長、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であるが、名称に捉われず、出社退社等について厳格な制限を受けない者について実態に即して判断すべきものである」というのが行政解釈です。
(3) 判断要素
ア 職務内容、責任と権限
管理監督者として認められるためには、職務内容や職責が経営者と一体的な立場にあると認められなければなりません。
しかし、次の事情だけでは、経営者と一体的な立場にあるといえるほどの権限や責任を有しているとはいえません。
- 部下からの勤怠の届出に承認を与える。
- 人事考課に際して意見を述べる。
- 部下の考課について上位者の考課が予定されている。
イ 勤務態様
管理監督者として認められるためには、労働時間について裁量を有している必要があります。
しかし、タイムカードの打刻が免除されているだけでは、出退勤について裁量があるとはいえません。
ウ 賃金等の待遇
管理監督者として認められるためには、経営者と一体的な立場にあるといえるほどの待遇を受けていなければなりません。
しかし、役職手当は付くが、残業代が出ないと、給料の金額は下がってしまうというのでは、一般労働者に比べて権限や責任の相応した高い待遇を受けているとはいえません。
(4) 管理監督者には当たらないとされた例
- 一般従業員と同じ賃金体系・時間管理下にある名ばかりの「取締役工場長」
- 昇進前とほとんど変わらない職務内容・給料・労働時間の「課長」
- 出退勤の自由がなく、部課の人事考課や機密事項に関与していない「銀行の支店長代理」
- 材料の仕入れ・売上金の管理等を任されているが、出退勤の自由はなく、仕事もウェイター、レジ係等全般に及んでいる「レストラン店長」
管理監督者に当たらない場合は、通常の労働者と同様に、残業代を請求することができます。管理監督者該当性は上記の判断要素からケース・バイ・ケースの検討を要しますので、弁護士に相談することをお勧めします。
(5) 管理監督者に当たるとされた例
労働時間の自由裁量、採用人事の計画・決定権限が与えられ、役職手当を支給されている「人事課長」
[Q&A]
労働時間該当性のよくあるケースは「Q&A:残業」をご覧ください。
[解決実績]
残業代請求に関する解決実績は「労働事件(残業・賃金)の解決実績」をご覧ください。
[弁護士費用]
詳しくは「法律相談・弁護士費用」をご参照ください。
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